top of page
旅行記事

フランス4


本日はパリから少し郊外のポワシーへ。待望のサヴォア邸。もはや乗り慣れた地下鉄なのだが、通常のメトロと違うRERの乗換え・切符購入にまごつく。駅から20分。道路から看板のある林道をくぐると、広々とした芝生の中央に白の塊が浮いている。このシンプルな矩形の函にどのような宇宙が秘められているか期待が高まる。南を正面に見、ぐるりと廻り北側からアプローチ。入口のスロープをそのまま進むと、徐々に拡がる光と風景の高揚に導かれる。2階のホールに達すると、リビング・テラス・屋上庭園と続くスロープ・螺旋階段・トップライト光が降り注ぐ寝室へ通づる廊下が一堂に会しながらも、それらは個々に絡み合い、複雑な風景を織り成しているのである。こうしたドミノシステムに始まる近代の指標に掲げた建築は、あくまでそれを構築の基盤に据え、そこから新たな五原則・建築的プロムナードにより豊穣な空間を獲得している。  満足に鼻を膨らまし、時間は昼過ぎ、もう一つ郊外。列車での移動シャルトルを目指す。再び切符購入と移動・待ちに時間を削がれ、パリ・モンパリナス15:06発、シャルトル16:15着。着いたところで移動も含め、制限時間45分。ターゲットはシャルトル大聖堂とピカシェットの家。命を燃やせ(ボッ)。にしてもなんて起伏に富んだ地方だ。マラソンの成果もあり、急ぎ足ながらも両方無事到着。シャルトル大聖堂が建築され始めたのは1145年。途中焼失などがあり、1154〜1222年に再建された。  シャルトル大聖堂に入るとまず感じるのが冷たく張り詰められた静寂だ。洞窟の中で水滴のしたたりが静けさを増長するように、ピアノの単調が重たく巨大な伽藍に響いている。そして高所から降り注ぐステンドグラスからの光が、この冷たい空間に唯一の生命を与えていく。  そしてピカシェットの家は、雑に「物貰いの家」との直訳らしいのだが、住者が陶器を拾い集めて22年の歳月をかけて作られた家だ。庭から彫刻・家・家具まで一つ一つ趣向が凝らされていて物への愛情と生活の喜びに充ち満ちた空間だ。  この26年の大規模な建設による人智を超えた荘厳な空間と、22年人一人の手造りによる人間らしい空間の対比もおもしろい。帰り道の住宅群。フランスには基本ほとんど電柱が無く、設備や看板らしきものもあまり散見されず、緑に溢れ、庭の手入れが行き届き、どこも美しい。建材や設備に覆われる日本との大きな違いだ。多分、美しくあることを至上とする国民性と、便利・快適であることを前提とする国民性には、見えざる神の眼差しを人の上に据えるのか、個々に神を宿らすかに発着している気がしないでもない。


最新記事
タグ検索
まだタグはありません。
ソーシャル
  • Facebook Classic
  • Twitter Classic
  • Google Classic
bottom of page